筋書きのないドラマ

一邸一邸ごとにドラマのようなストーリーがあります。

恐らく住宅の建築の仕事をしていると
大変思い出深いお施主様が少なくとも数件はあるはずです。

今回は、昔を振り返り私の初のお客様になって頂いた方のお話しです。
何事にも初めてはあります。
我ながら初々しいとも思えるので、お恥ずかしいですがお付き合いください。

入社して間もなく、6月中旬ごろの事だったと思います。
当時の展示場には、ベテラン勢が在籍しており展示場の掃除は
新入社員とひとつ上の先輩社員とで行っていました。

落ち葉や雑草拾いから始まり、植木の水やり、デッキブラシでゴシゴシ、
窓拭きまで、外回りは担当していました。
先輩社員が直行でいらっしゃらない時は、早く出勤し、
室内も掃除してから外出するということもやっていた若い頃。
真面目ですね!!
褒めてあげたいです笑

暑くなってきたある日曜日の朝イチに、そのお客様はいらっしゃいました。
当時まだクールビズが世の中にない頃、ネクタイ姿で汗をかきながら
掃除をしている新入社員に見学していいですか?と声をかけてくれたのです。

『あ、はい。』とこんな朝イチに来る?と思いながら、
接客のチャンスが少ない私は、これみよがしにご案内へ。
よく考えると、玄関に水撒き用のホースとデッキブラシは出したまま。
そんなの関係なしです!

カタログにもそのまま掲載された展示場でしたので、
大変良い展示場でした。
一生懸命案内しました。

若い自分を見て、優しくご対応も頂きました。
施主様のご年齢は30代前半。
私は営業としての嗅覚も全くない頃でしたので、
その営業っぽくないところ・業界に染まっていないところが良かったのか
聞けば、実家の隣に建ててもいいかなみたいなフワッとした計画。
今日は見に来ただけだからと、お帰りになられました。

接客後、事務所に戻って、引合カードにアンケートとご案内して伺った内容を記入し、
店長に報告。

すると、店長からは、そのカードとアンケートがお札をばら撒くかの如く
『やり直し!!』とのご指導。
お顔とお体も少々デカかったので、今でいうパワーハラスメン…がありましたね笑

確かに全く聞くことすら聞けていない自分に、
何やってんだと、仰る通りで反論すら出来ませんでした。

その日の夕方、自転車で約30分くらいのところにあるご自宅へご来場のお礼に。
わざわざありがとう!ってまた優しい笑顔。
店長と大違いやと思いながら帰路へ。

店長も店で待っていてくれ、報告と同時に『やり直し!』頂きました。
1回で言えや!と心で思いながらも、自転車でお客様のご自宅へ通う日々。

今思うと、店長はこの人は建てると最初の段階で想像できていたんだろうなと。
経験の少ない若手にはわかりませんでした。

その後すぐにアポが取れ、敷地調査やプラン提示を行いました。
私は横に座っているだけで、店長の折衝力の高さにビビりました。
打合せの内容の密度が濃く、そりゃ確かに何回もやり直しって言われるわって感じました。

施主様は、お店に電話してくれる時も、
見込み客の〇〇ですとユーモアたっぷりに対応頂けました。

今思うとその時には、心の中は決まっていたんでしょうね。
7月に初契約のご縁を頂戴しました。
店長と先輩社員のお助けあっての初契約です。

その後、打ち合わせのさなか誕生日でしょとネクタイも頂き、
今でもキレイに取ってあります。
大切すぎてなかなかつけることができずに、今に至ります。

オーナー様には、年末のご挨拶でカレンダーをお渡しするのですが、
私のカレンダーは、1棟目のオーナー様から始まります。

ご存知でないと思いますし、言う必要もあまりないので
言っていませんが、初めての感謝を忘れない事から始めたいのです。

思い出話でした。